ニュージーランドの農業について


目次

  • 統計データ
  • 特徴①放牧
  • 特徴②オーガニック(有機)農法

 

ニュージーランドの農業に関する統計データ

ニュージーランドの国土の約半分に当たる1356万ヘクタールが農業用地で、農家の数は約5万戸です(2019年国勢調査より)。

もっとも盛んなのは酪農と畜産で、2023年の家畜飼育頭数の統計では乳牛が588万頭、肉牛365万頭、羊2435万頭でした。

ニュージーランドの人口はわずか500万人で、市場規模も小さいため、生産される乳製品や肉類は多くが輸出されます。

 

2025年、ニュージーランドの貿易輸出は1050億ドルにまで達しました。そのうち乳製品の輸出額は262億ドル、肉製品117億ドル、リンゴやキーウィフルーツなどの果樹類が61億ドルで全体を牽引しました(ニュージーランド・ドル表記)。特にキーウィフルーツは+45.9%という急成長でした。

 

ニュージーランドにとって農業は基幹産業のひとつであり、世界的に見ても農業大国といえます。また今後も成長する分野ともいえます。

 

 

ニュージーランドの農業の特徴

 

① 放牧

気候が温暖で広大な農地を確保しやすいニュージーランドでは、牛も羊も放牧されていることが多いです。放牧とは牧草地をいくつかに柵で区切って、家畜をひとつの区画内に放って飼育する方法です。家畜が草を食べつくすと別の区画に移動させます。家畜の糞尿が肥料となって牧草を育みます。生産コストが安くすむのがメリットです。

 

日本の酪農・畜産農家出身の学生たちが留学して驚くのはまずここで、家畜の世話が最低限で済むため、ニュージーランドの農家ではワークライフバランスが実現しやすいです。牛舎もなく、牧草も家畜が勝手に食んでくれるため、長期の旅行に出る農家の方もいらっしゃいます。

 

もちろん日本とニュージーランドでは環境が異なるため、必ずしもニュージーランドのようなかたちで日本でも酪農や畜産業が営めるとは言い切れません。その一方で「日本でも工夫しだいでもっと効率的に農業ができるはず」と希望を持って留学プログラムを終える学生たちが何人もいることは、日本の農業セクターの将来を照らす一助になるかもしれません。

 

 

② オーガニック農法

オーガニックとは単に「化学肥料や殺虫剤を使わない」という意味に誤解されがちですが、実際はより複雑で、どうやって持続可能な方法で土をメンテナンスし収穫を得るか、家畜を扱うかといった課題も含まれています。

ニュージーランドでは1980年代初頭からオーガニック農法が注目されはじめました。カンタベリー地方にあるリンカーン大学ではこの時期からすでにオーガニック農法に関する研究がおこなわれ、地域の農業に貢献していました。

 

オーガニック農法はコストの高い農法でもありますが、それでもニュージーランドの農家は積極的にオーガニック農法を取り入れてきました。また消費者も積極的に買い支えます。

このような風土の背景にはニュージーランドの先住民族マオリの人々の「自然を守る」という哲学が根底にあるかもしれません。

 

 

【参考URL】

今村吉文. (2021). 日本と似た国、ニュージーランドのスマート農業とは?SMART AGRI. https://smartagri-jp.com/agriculture/3068

 

農業産業振興機構. (2021). オセアニア[NZ]. 年報『畜産』. chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.alic.go.jp/content/001173172.pdf

 

New Zealand Foreign Affairs and Trade. (2025). Trade and Economic Update – Q1 2025: New Zealand Exports show growth and resilience despite global trade uncertainty. MFAT Market Intelligence Reports. https://www.mfat.govt.nz/en/trade/mfat-market-reports

 

Mason, S. (n.d.). Organic farming. Te Ara – The Encyclopaedia of New Zealand. https://teara.govt.nz/en/organic-farming/print

 

Stats NZ. (2021). Livestock numbers – published April 2021. https://www.stats.govt.nz/indicators/livestock-numbers/